リラクゼーションケアの活用 音楽療法 第1回

音楽療法とは?

音楽療法という言葉が日本で使用されるようになったきっかけは、アメリカのエドワード・ボドルスキーの『Music Therapy(1954)』だと言われています。
エドワード・ボドルスキーは、心療内科や精神疾患に対して大きな影響を与えました。
また、イギリスでは、1958年に英国音楽療法協会が結成され、その中心的人物である、J.アルヴァンは、チェリストとして、また、音楽療法士として、多大な功績を残しています。
彼は二度来日し、多くの人に刺激を与え、日本の音楽療法に具体的な発展をもたらしています。

わが国においては、音楽療法を最初に扱った書物に『生活の芸術(誠信書房1966)』があります。
著者である櫻林仁をはじめ、『音楽による心理療法(岩崎学術出版1966)』の著者、山松質文らが、臨床心理学の立場から自閉症に対して音楽療法の技法を提唱しています。
また、加賀谷哲郎らは、障害児音楽教育の中に、広く浸透している加賀谷式集団音楽動作指導法を開発しました。
これは、障害児が母親と一緒に楽しく歌や動作を覚えていける音楽遊戯です。

音楽療法の定義

定義としては、全日本音楽療法連盟による定義(1996)が全国レベル的には初めてのものです。
2001年には、日本音楽療法学会により新たな定義がなされました。
前者によると、
「音楽療法は、音楽のもつ生理的、心理的、社会的働きを応用し、心身の障害の軽減回復、機能維持改善、生活の質の向上、問題となる行動の変容などの目的のもとに、意図的、計画的に行なわれる治療プロセスである」
とされています。
後者のものも内容的には同質であり、会員数は2005年3月で6000人を越え、認定音楽療法士も1063人います。
1997年には、前者の認定音楽療法士が100名誕生しました。

行政と音楽療法

昨今は、自治体で認定を行なっている県もあります。
兵庫県、奈良市、桑名市などがそうで、音楽療法に取り組まれています。
今後益々、音楽療法への注目や関心が集まるでしょう。
音楽療法の社会的認識、需要の高まりの背景には、わが国の高齢化社会による諸問題がひとつの要因と考えられています。
更に、一人ひとりが問題意識をもって健康な生活を営むという目的で、予防医学、ストレスマネジメント、健康増進という広い視野に立った医療や保健の捉え方が活発になってきている事も関係していると思われます。

音楽療法は、音楽のもつ力により人の生理面、心理面、社会面への作用を活用する事で、様々な治療的効果が認められています。
一方で、人が生きていく上で重要な感情の表出や自己表現、そしてコミュニケーション、集団活動での人間の存在価値の側面も実現できる療法形態でもあります。
音楽療法は賛否がある中で、現代社会の需要に応え得るアプローチとして取り上げられてきつつあります。