医療現場の現状 進歩した現代の医療技術と課題

ソシオエステティックの普及のためには、その背景となる医療現場の現状について知っておく必要があります。
現在の日本の医療の現状を見ると、非常に輝いている部分と暗い部分に二極化されているように感じます。
輝いている部分は、医学の目覚しい進歩であり、まさしく日進月歩の世界です。
CT(コンピュータ・トモグラフィ)が実用化されてから20年以上経ちますが、これにより、胸部や心像の一部、大動脈、食道などが外側から見えるようになりました。
そして、同時に超音波診断も発達し、更に、MRIではCTよりも詳しく病巣の状態が把握できるようになりました。
このように、手術の安全性、根治性が予測できると同時に手術の精度も高まって来ました。
術後の管理にしても、ICUや呼吸機器の進歩、中心静脈栄養(IVH)の発達も目覚しいものがあります。
これらによって、術後の合併症などが起きた場合や、口から食べ物の摂取ができない状態が長期間に渡っても、充分に乗りきっていけるようになりました。
その他、化学療法や免疫療法なども年々進歩しています。
このように医学としての戦術は確実に進歩し増加しているのですが、これだけ医学が進歩しているのにもかかわらず、癌や他の病気は減少しないし、抗生物質の効かない新種の耐性菌などの病気が現れたりしています。
更に、進歩した分だけ、薬や医療機器に費用がかかるようになりました。
医療費は高騰するのに、病気は治らないという悪循環が生まれているように感じます。
国民医療費も増加の一途を辿り、1999年には30兆円を越え、2007年度では34兆円を越えています。
アメリカの医師、アンドルー・ワイル博士は、10年程前に、 「アメリカの医療が崩壊を始めた」 と告げています。
その第1の理由として、医療費の高騰により、医療経済が成り立たなくなってきている事を挙げています。
これは日本にも当てはまります。
また、病気別の死亡率を見てみると、肺炎などの感染症は減少しつつあり、心筋梗塞や脳血管疾患は増加傾向にあったものの、最近になって、徐々に減少しています。
しかし、悪性新生物である癌は、増加の一途を辿っています。
減少してきている感染症は、病気の原因がはっきり特定できるものです。
その原因を取り除く事で、治療効果を挙げることができます。
このような単純系で処理できる部分は、西洋医学の発達によって治せるようになった反面、癌などの複雑系に対しては、単純系の医学だけでは届かないと言えるのではないでしょうか……。