ルジエール女史のレポート

創世記の頃の活動の中から、女史が経験した活動レポートの一例を挙げます。
これは、「ESTHETIQUE 2004 11月号」からの引用です。

「一人の自閉症のティーンエイジャーの女の子が精神科に入院していました。その子は、看護師達や家族とも、全くコミュニケーションが取れない子でした。何回かエステティックを行なった後、女史は、お互いの中に信頼関係が生まれた事を感じました。それは、その女の子が小さな声で『メルシイ』と発したからです。それがきっかけで、女の子はいろいろと話してくれるようになりました」
その時、女史は、
「エステティックが病気に勝った!」
と、初めて思った……そう述べています。

また、
「1972年の同年、女性刑務所付きの医師のサポートがあり、女性刑務所でもエステティックを実践する許可を得たのです。服役者達には自由がなく、自主性、アイデンティティーを無くしてしまった女性達がいました。彼女達は、自分が女性であることすら忘れてしまっていました。彼女達は、どうなってしまったのだろうか? 顔のない女性でした。見られることもなく、壊れた心を持った女性なのでした」
ルジエール女史たちの役割は、彼女達に新たな人生の目的を与え、もう一度自分自身を作り上げるお手伝いをする事でした。
彼女達は、施術のお礼に、自分達の置かれている状況を絵に描いたり、感じた事を文字にして女史達に渡してくれました。
手紙の一例として、
「あなたのクリームの香りは、私がかつて知っていた自由の香りがします」
「この刑務所には誰も来てくれなくて、私は落ち込んでいました。でも、ソシオエステティシャンが来てくれて、そのケアは本当に気持ちよく、いっとき私は普通の生活から疎外されているのではないと感じる事ができました。本当に気持ちの良いひと時を、このように生きることの難しい場所で過ごさせてくれてありがとうございました」
などの感謝の言葉であったと女史は言っています。

では、高齢者はどうでしょう?
進歩した医学のおかげで今日では、歳を取っても長く元気で過ごせるようになりました。
ソシオエステティシャンの役割は、高齢者に美しくして差し上げることだと考えています。
人は、老いることによって、昔、出来ていた事が出来なくなる、物事に関心が持てなくなる、興味が湧かなくなる、そして、自分の顔や手や身体が自由に動かなくなり、醜くなってきた事を認識します。
これらは、高齢者が自分の中に引きこもる充分な理由になります。
ソシオエステティシャンが高齢者に接する事で、お年寄り達は、より綺麗にしようと努めるようになってくれます。
そのようなお年寄りの方が持たれた感想の一例を、女史が、以下の様に紹介しています。
「こんなに綺麗になって、私じゃないみたい。主人が見たら『綺麗だよ』と言ってくれるかしら?」
と、鏡の中の自分の顔を見つめながら、この上ない笑顔になり、鏡を暫く放そうとしない人が多いのです。

男性の高齢者の方も、お顔や手足のマッサージなどをしてもらうことを喜ばれます。
1981年、ソシオエステティシャンは、癌患者の病棟でも働くようになりました。
この病棟の患者達は、自分の身体イメージが壊れてしまった人達でした。
化学療法は、患者たちの身体に物理的に大きく変化させてしまいます。
髪の毛や眉がなくなる、爪の形が変形する、皮膚の色が変わる、顔や身体の形が変わってしまう、そしてあるのは「死」への恐怖です。
その癌患者達のコメントを紹介します。
「化学療法を最初に受けた後、ソシオエステティックのケアを受けました。ソシオエステティシャンのマッサージのおかげで、私の身体が感じた化学療法からくる気持ちの悪さを忘れることが出来ました。吐き気が全くなくなったのです。ソシオエステティシャンの暖かい手で爽やかさがよみがえり、例えようもないエネルギーが伝わってきたのです」
「ソシオエステティシャンは、身体だけでなく心も癒してくれます。肉体的には、触れられる心地よさ、優しさ、気持ちの良い香り。心のケアは、人間的な触れ合い、人と人との交流、言葉、こちらの願いを聞いてくれる。そして、静けさ。すべてが、私を癒してくれたのです」
「やっと、治療によって傷つけられた私の身体をいたわる為に、無料で人が来てくれました。私は受けた治療よって、受け入れ難い程に身体が変形してしまっています。ソシオエステティシャンは、そんな私のお顔の手入れをしてくれ、メイクアップをする事で私に生きる力”生”を少し与えてくれました。でも、一番良かったのは彼女がしてくれたマッサージ。これでストレスと背中の凝りが取れました。病人を手助けするとは素晴らしい事。ソシオエステティシャンありがとう。もっと彼女達の数が増えれば良いのにと、切に思います」
このような、女史の弛まぬ努力と多くの機関や人々の協力・援助により、2000年12月ソシオエステティシャンが正式な職業として、フランスの国家認定を受けました。
2009年12月現在、約600名がポストについています。
コデスを経ずに、例えば、看護師や介護福祉士などが、エステティシャンの資格取得後、直ぐに、元の職場での実践を始めるケースもあるので、実際には、もっと多くのエステティシャンが、医療や福祉の分野で働いていると思われます。