それは、
「人道的、福祉的な観点から、精神的、肉体的、社会的な困難を抱えている人に対し、医療や福祉に基づいて行なうエステティック」
です。
ソシオエステティックの目的は、
「エステティックの施術によって人を癒し、励まし、QOL(生活の質)の向上に寄与し、その人が本来の自分を取り戻す為の支援をする事」
です。
本来、エステティックとは、心身共に、より美しく健康になることを目指す為の手立てです。
エステティックには、一般的な「エステティック」、そして、治療の一環として行なわれる「メディカルエステティック」があります。
昨今、それらに加えて、闘病生活を送っている人や介護を受けている高齢者、困難を抱えている人を支援する「ソシオエステティック」が、新しい領域として注目されています。
「ソシオ」は、「SOSIO=社会、社会福祉」を意味し、「エステティック」は、「ESTHETIQUE=美容術、美意識」を表しています。
フランスには、病院や福祉施設、刑務所で働く専門の「ソシオエステティシャン」がいます。
彼女達は、美容行為を通じて、病気、事故、老化などの肉体的苦悩、また、精神障害やアルコール、薬物など、様々な依存症による精神的苦悩、そして、失業や拘束などの社会的苦悩を抱えた人々をケアしています。
これらのケアは、通常、看護、介護サービスの一環として、無料で提供され、医療機関や社会福祉施設など、他の領域からなる医療チームによって立てられる治療計画、生活改善計画の一環を成しています。
ソシオエステティックは、美容面だけにとどまらず、患者に精神的な安らぎを与える事を目的としています。
痛みや不快感を伴う一般の治療とは異なり、看護スタッフとは異なった角度からアプローチします。
日常の医療行為では行き届かない精神面でのケアを担当し、入院環境の改善、QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)の向上を目指すケアです。
言わば、医療を社会福祉の面から捉えた仕事です。
体調不良は、しばしば、患者の肉体だけでなく精神的にも打撃を与えがちですが、ソシオエステティックを施すことによって、病院では失いがちな女性としての自覚を取り戻し、回復への意欲をアップさせる作用も期待出来ます。
病気から回復する為には、患者自身の治そうとする力が必要ですが、ソシオエステティシャンの存在は、病院の外の世界との繋がりを維持し、気力を保たせ、回復を早める効果をもたらしています。
また、例え健康であったとしても、社会的、精神的苦痛によって、徐々に外見や肉体が蝕まれることがあります。
この場合も、ソシオエステティックによって、外見が整えられることで、アイデンティティを再認識する事ができ、将来に対する希望へと繋がって行きます。
「より美しくなること」がエステティックの目的ですが、それに加えて、
「一人一人が、本来の自分自身の姿を取り戻す手助けをすること」
それこそが、ソシオエステティックの役割なのです。
フランスでエステティシャンになるには、CAP(Certificat d’ Aptitude Professionnelle:エステティシャン国家資格)を取得しなければなりません。
その後、現場でキャリアを積み、ソシオエステティシャン養成機関、コデスのカリキュラムに沿って、トゥール医科大学の現役大学教授陣によって教育されます。
エステティックの技術は、目に見える変化をもたらす為の手段ですが、その効果は、外見に表れるだけでなく、もっと深いところまで作用します。
施術により、感覚や感情を刺激し、患者自身のエネルギーを引き出してあげることで、患者は自分の置かれた状況と向き合う事ができる様になります。
ソシオエステティシャンの仕事は、看護を受ける者全てに寄り添い、彼らと共に時間を共有し、彼らの話に耳を傾け、理解を深めることで、彼らが、健全な社会へと復帰できる様、促すものです。